3日目
 
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オオゴマダラ
𝐼𝑑𝑒𝑎 𝑙𝑒𝑢𝑐𝑜𝑛𝑜𝑒 Erichson, 1834
タテハチョウ科に分類される大型のチョウ。沖縄島では普通種だが 、その豪勢な姿はいつ見ても良い。東南アジアに広く分布し、日本では喜界島,与論島以南の南西諸島に分布する。本種を含むマダラチョウ類のオスの腹部末端にはフェロモンを分泌するヘアペンシルと呼ばれる器官がある。
宮古島市,石垣市の市のチョウに選定されている。

 3日目。
さてそろそろクワガタが見たい。そもそも自分はクワガタ屋だし両爬ばっかじゃ満足できない。
ということで早速前日に仕掛けておいたバナナトラップを確認しに行った。

しかし集まっていたのはナメクジばかりだった...
(おぞましい絵面になっていたので写真はここでは控えておく)

ただでさえ時期が悪いのにどうやら昨晩はここ数日の中でもかなり冷え込んだらしい。
いないものはしょうがないのでネブトとルイスツノ採集に切り替えた。

名護市から少し外れた山で林道を流していると良さげな枯れ沢があった。同行者によるとルイスツノは涸れ沢沿いにある"シロアリ”がすんでいる材を好むらしい。
どンなものかと材を割っていくがなかなか見つからない。すると同行者が早速ルイスツノの成虫を複数匹見つけた。
どんな材なのかを確認して再度探してみると幼虫がたくさん出てきた!!

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ルイスツノヒョウタンクワガタ
𝑁𝑖𝑔𝑖𝑑𝑖𝑢𝑠 𝑙𝑒𝑤𝑖𝑠𝑖 
Boileau, 1905
幼虫は朽木食性だが成虫は肉食という少し変わった生態を持つクワガタムシ。成虫は今回採れなかったので詳しい解説は省く。この個体は一見𝐷𝑜𝑟𝑐𝑢𝑠属の幼虫のような体型をしていたが羽化後やはりルイスツノだった。(本来𝑁𝑖𝑔𝑖𝑑𝑖𝑢𝑠の幼虫は細身)

 ひとまずクワガタが採れたので一安心した。ネブトも似たような環境に生息していると思っていたが全く見つからなかった。
午前中はほとんど材割りをしていたので午後は再びやんばるの方に向かった。

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やんばるの森
背の高い木はあまりないが植生は複雑
 
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サーターアンダギー
昼食をとった店の横にあった売店にて。

午後は特にすることもなかったので両爬好きの同行者と一緒に色々な両爬を探すことにした。

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オキナワイシカワガエル
𝑂𝑑𝑜𝑟𝑟𝑎𝑛𝑎 𝑖𝑠ℎ𝑖𝑘𝑎𝑤𝑎𝑒 (Stejneger, 1901)
2日目に見た個体とは別個体。青色の色彩変異個体はかなり珍しいと言われているがそれなりに個体数はいた気がする。この個体はいつも同じ岩の隙間にいた。

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オキナワキノボリトカゲ
𝐷𝑖𝑝𝑙𝑜𝑑𝑒𝑟𝑚𝑎 𝑝𝑜𝑙𝑦𝑔𝑜𝑛𝑎𝑡𝑢𝑚 𝑝𝑜𝑙𝑦𝑔𝑜𝑛𝑎𝑡𝑢𝑚 Hallowell, 1861
ずっと威嚇してきた個体。小さな恐竜のようなところがとても可愛らしい。

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やんばる某所
3日目は天気がとてもよく気温もこの日は26℃あった

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昭和63年元日辰生年祝記念像
一部の虫屋ではかなり有名な像

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リュウキュウアカガエル
𝑅𝑎𝑛𝑎 𝑢𝑙𝑚𝑎 Matsui, 2011
沖縄、久米島に分布。アカガエルなのでやはり水気の多いところより(やんばるの中では)比較的乾燥した場所で多く見かけることができた。繁殖は11月から12月にかけて行われる。
以前までは奄美大島や加計呂麻島、徳之島に分布しているアカガエルも同種とされているが2011年に別種𝑅𝑎𝑛𝑎 𝑘𝑜𝑏𝑎𝑖 
Matsui, 2011として分けられた 。

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ヌマガエル
𝐹𝑒𝑗𝑒𝑟𝑣𝑎𝑟𝑦𝑎 𝑘𝑎𝑤𝑎𝑚𝑢𝑟𝑎𝑖 Djong, Matsui, Kuramoto, Nishioka et Sumida, 2011
西日本以南から台湾にかけて分布する。ヌマガエル類自体東南アジアから東アジアにかけて広く分布する種だが、最近の研究によると広い分布域の中でインド、マレーシア、インドネシア、タイとラオス、中国と台湾、先島諸島、日本と多くのグループに細分化されることがわかった。

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オキナワアオガエル
𝑅ℎ𝑎𝑐𝑜𝑝ℎ𝑜𝑟𝑢𝑠 𝑣𝑖𝑟𝑖𝑑𝑖𝑠 (Hallowell, 1861)
道路沿いの渓流にて。体表面は非常に滑らかで、四肢の指には発達した吸盤があるのが特徴的である。本土でよくみかけるシュレーゲルアオガエルは本種の近縁種とされており、奄美地方に分布するアマミアオガエルは本種の亜種とされている。

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リュウキュウカジカガエル
𝐵𝑢𝑒𝑟𝑔𝑒𝑟𝑖𝑎 𝑗𝑎𝑝𝑜𝑛𝑖𝑐𝑎 (Hallowell, 1861)
渓流近くの用水路にて。体色は黄色から褐色まで様々で、個体変異があるようだ。種小名にもあるように旧和名はニホンカジカガエルだったが、カジカガエルとの混同を避けるために現在では呼ばれていない

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オキナワイシカワガエル
𝑂𝑑𝑜𝑟𝑟𝑎𝑛𝑎 𝑖𝑠ℎ𝑖𝑘𝑎𝑤𝑎𝑒 (Stejneger, 1901)
こちらが通常型。色彩変異個体も確かにきれいだがこちらもなかなかイイ感じの緑色である。

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イボイモリ
𝐸𝑐ℎ𝑖𝑛𝑜𝑡𝑟𝑖𝑡𝑜𝑛 𝑎𝑛𝑑𝑒𝑟𝑠𝑜𝑛𝑖 (Boulenger, 1892)
ゴジラのような雰囲気が感じられる。夜も気温が高かったため個体数は今回の遠征でこの日が一番多かった。

ご存知の方も多いと思うが、シリケンイモリには金粉の入り方に個体差がかなり大きい。今回の遠征で密かに目標にしていたのが全身“金”のシリケンイモリである。
実はこれがなかなか難しい。沖縄のシリケンイモリの多くには金粉が入っているが、ほとんどの個体が疎らに少しだけしか入ってない。

夜も大分更け、「これで最後にするか」と思いながらある水たまりを何気なく覗いたら真っ金金のイモリの尾が見えた。
「尾までが金粉が入っている個体はそう見つからない...これは大物だ」
急いで長靴に履き替え、タモ網を持ち、池に飛び込んだ。飛び込んだ後に気づいたのだが池の周りにはよく見るとヒメハブが3匹いた...(今後は興奮しても落ち着くようによう。。)

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ヒメハブ
Ovophis okinavensis (Boulenger, 1892)
クサリヘビ科ヤマハブ属に分類されるためいわゆるホンハブ(ハブ属)(正式名称はハブだがここでは毒蛇の俗称としての“ハブ”と区別するためにホンハブと呼ぶことにする)とは別属である。
性格はホンハブとは対照的でかなり温厚である。よっぽどなことしない限り襲われることはまずない。それゆえ事故件数も少なく、本種の抗毒血清は製造されておらず、分布地の医療機関にも配備されていない場合が多い。とはいえ餌を捕まえるときは毒を使うので注意が必要である。

ヒメハブをそーっとどかした後タモ網でひたすら掬った。しかし30分経過してもなかなか見つからない。池といっても直径2mもない水たまりのようなものだったのにも見つからない。
「もしかして幻か..」そんな不安がよぎる中タモ網で赤い腹をした小さな何かが飛び跳ねた。
恐る恐るタモ網の中で跳ねる生き物を手に取ってみると何とオオイチモンジシマゲンゴロウだった。

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オオイチモンジシマゲンゴロウ(沖縄島個体群)
𝐻𝑦𝑑𝑎𝑡𝑖𝑐𝑢𝑠 𝑐𝑜𝑛𝑠𝑝𝑒𝑟𝑠𝑢𝑠 (Régimbart, 1899)
山中の水たまりにて。シリケンイモリとヤブヤンマのヤゴと併存していた。本土産や八重山産の個体群よりも上翅に多くの金筋が入るのが特徴的で、網に入った際には圧倒的な存在感を放っていた。
準絶滅危惧種

棚からぼたもちとはまさにこのこと。思わぬ生き物との出会いに心底感動した。
しかしまだイモリは見つかっていない。。あと30分で見つからなかったら諦める旨を同行者に伝えた直後ついに捕まえた。

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シリケンイモリ(沖縄個体群)
𝐶𝑦𝑛𝑜𝑝𝑠 𝑒𝑛𝑠𝑖𝑐𝑎𝑢𝑑𝑎 (Hallowell, 1861)
水辺があるところではどこでも見かけることができた。この個体は斑紋がかなりある個体だった。ある研究によるとこの斑紋は奄美群島産は4-11%、沖縄諸島産は71-91%の比率で入るという報告がある。
一般的に斑紋の入り方や体型、お腹の色などから沖縄個体群はオキナワシリケンイモリ spp. 𝑒𝑛𝑠𝑖𝑐𝑎𝑢𝑑𝑎 (Hallowell, 1861)、奄美個体群はアマミシリケンイモリ spp. 𝑝𝑜𝑝𝑒𝑖 (Inger, 1947)として別亜種扱いされているが、日本爬虫両棲類学会ではこれを認めていない。

思った通りの大物だった。いやあ嬉しい。
採ったあと車に戻ろうとしたら急げに眠くなった。時刻は25時ちょうどだった。(待っててくれた同行者には感謝しかない)

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ナミエガエル
𝐿𝑖𝑚𝑛𝑜𝑛𝑒𝑐𝑡𝑒𝑠 𝑛𝑎𝑚𝑖𝑦𝑒𝑖 (Stejneger, 1901)
山中の渓流にて発見。オオイチモンジシマゲンゴロウと同じ場所で見られた。メスよりもオスの方が大型化し、半水棲で水中でも採餌することが知られている。
国内希少野生動植物種,絶滅危惧IB類


3日目はこれにて終了。クワガタの成果はイマイチだったが多くの固有の両爬をみることが出来て大満足な1日だった。