よりみち鍬形日誌

離島を愛する鍬形屋。大学四年間の目標は規制種以外の日本の離島クワガタを全種自己採集。 Twitter @odontolabis31 Instagram @_dorcus31

海外

2019 ジャワ島(6)



5日目(後半)

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ライトトラップの様子
ライト上の傘はスコール対策

待ちに待ったライトトラップが点灯した。今回のライトトラップは崖上の見晴らしの良い場所に設置し、反対側の山に向けて光を照らした。
風もほぼ無く、湿度もそこそこ高い。これは期待できると胸を躍らせていたわけだが、やや星空が見えていたのが少し不安だった(これはこれで絶景)。湿度は高いが、なにぶん標高が1000m以上ととても高いので気温は15℃前後とかなり低かった。しかしガイドによるとジャワの高山種はこれくらいの気温が一番いいらしい。これは少し意外だった。

18時に点灯して30分、、、小さい雑甲はポツポツと集まり始めたが想像していたものとはだいぶ虫の集まりが悪い。。。「これはもしや“好条件なのに虫が全く集まらないパターン”ではないか..」そんな不安が頭の中をよぎっていたが、とある“ムシ”の飛来によって一瞬に払拭された。

18:45
崖側からけたたましい羽音が聞こえてきた。弾丸の如く現れた黒い物体は一直線に白シーツに着地した。
黒い物体の正体は夢にまで見たコーカサスオオカブトだった!!

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コーカサスオオカブト
𝐶ℎ𝑎𝑙𝑐𝑜𝑠𝑜𝑚𝑎 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 Oliver, 1789
ジャワ島からマレーシアなどに分布する広域分布種で、標高800m〜2000mの熱帯高地林や雲霧林に生息する。コーカサスオオカブトは現在4亜種が知られており、ジャワ島の個体群は基亜種である。ジャワコーカサスはコーカサスオオカブトの地域個体群の中でも最も体調が小さくなる個体群である。

それまで意気消沈状態だったメンバーだったが、この個体の登場により一気に採集のボルテージが上がった。
ペットショップなどでよく売られている本種だが、現地で野生の個体を見るのはやはり格別である。

この個体の登場だけでもかなり嬉しかったが、遥々日本からインドネシアまで来たわけなので、是非オスが見たい。メンバー一同躍起になってライトラ周辺の藪を隈無く探した。しかしここで見つかったのはナナフシばかりだった。

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ライトラ周辺で採れたナナフシたち

20m四方を少し探しただけでこんなに多様なナナフシが採れるとは。。。ジャワ島の生物多様性の豊かさにはただただ舌を巻いた。

19:22
二頭目のコーカサスオオカブトが飛来した!!今度はオスだった!!!
見ればわかる小型個体だが、日本の虫では見られない大柄な体格に心底感動した!!

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コーカサスオオカブト
𝐶ℎ𝑎𝑙𝑐𝑜𝑠𝑜𝑚𝑎 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 Oliver, 1789
この個体はライトラ横の木の枝にくっついていた。

この時間帯あたりから一気に多くの虫が飛来し始めた。全てをあげるのはきりがないので以下では主だったものを時系列順に紹介する。

21:02
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コーカサスオオカブト
𝐶ℎ𝑎𝑙𝑐𝑜𝑠𝑜𝑚𝑎 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 Oliver, 1789
三頭目の個体。コーカサスオオカブトは美脚の持ち主である。

21:27
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コーカサスオオカブト
𝐶ℎ𝑎𝑙𝑐𝑜𝑠𝑜𝑚𝑎 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 𝑐ℎ𝑖𝑟𝑜𝑛 Oliver, 1789
四頭目の個体。長角個体はなかなか現れなく、このサイズの個体が多かった。この後にはオスは飛来しなかったが、メスは数頭飛来してきた。


22:01
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ハグルマヤママユ
𝐿𝑜𝑒𝑝𝑎 𝑠𝑎𝑘𝑎𝑒
日本でも琉球列島で見かけることができる。鱗翅屋の方によると、ジャワ島の個体群は基亜種の可能性があるとのこと。

22:23
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クロツヤムシの仲間
Passalidae gen. sp.
クロツヤムシの仲間は日本では四国や九州の山地に生息しているツノクロツヤムシ一種のみである。基本的にクロツヤムシは体長が10-20mmで瓢箪型をしているものがほとんどだが、この種はかなり大型になるようで、チビクワガタに似たスマートな体型をしていた。ミトコンドリア16S rRNAの解析によって、クロツヤムシ科 Passalidaeはクワガタムシ科 Lucanidaeと単系統群をなすとされているが(細谷・荒谷, 2006)、幼虫の形態などから本科とその近縁な科の系統関係は今後さらなる精査が必要。


22:28
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ベリコサツヤクワガタ
𝑂𝑑𝑜𝑛𝑡𝑜𝑙𝑎𝑏𝑖𝑠 𝑏𝑒𝑙𝑙𝑖𝑐𝑜𝑠𝑎 (Castelnau, 1840)
人生初のツヤクワガタ属(𝑂𝑑𝑜𝑛𝑡𝑜𝑙𝑎𝑏𝑖𝑠属)はベリコサツヤクワガタだった!!第一印象は
「もうこれマルバネクワガタじゃんっ」
マルバネクワガタ属(𝑁𝑒𝑜𝑙𝑢𝑐𝑎𝑛𝑢𝑠属)とツヤクワガタ属の系統関係は一部の界隈ではかなり昔から議論がある話題である(まあ繭玉をつく流、幼虫の形態、幼虫の食性、メスの体型を比較すれば無理もない)。ジャワ島東部に生息するツヤクワガタ属は本種のみ。オスの飛来も期待していたが結局飛来してくることはなかった。このメス、なんと55mmもある超特大個体だった。

昆虫の個体自体は多くはなかったもののなかなか楽しい夜だった。自分は朝の3時ごろに力尽きて就寝した。

Reference
・細谷忠嗣・荒谷邦雄(2006)DNAから見た日本産クワガタムシ13属の系統関係〜大アゴに見られる性
 的二型進化のパターンを探る. 月刊むし, 426: 41-49

2019 ジャワ島(5)はこちら

2019 ジャワ島(5)

5日目(前半)


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車が到着した頃はまだ夜が明けていなかった


某山の麓に着いたのは翌朝5時ごろだった。


近くの民家で朝食をとりながら現地採集人に山での採集状況を聞いた。時期的にコーカサスは発生のピークではないらしいが、昨晩にも複数頭とれているらしく、やればとれるだろうと言われた。

どうやらコーカサスオオカブト自体は年中とれる虫らしく、条件さえ合えばいつでも採集できるようだ。


少しまったりしたあと、8時ごろに山のポイントに向かった(勿論ここからは登山なので徒歩)。

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山の麓付近はコーヒーが栽培されていた

テントやライトラ機材は現地採集人がバイク(?)で持っていってくれた笑
予定してるライトラポイントの標高は約1,200m。。果たして本当にバイクで持っていけるのか不安だったが足とアクセルを上手く使いながら泥の山道を走ってもっていった笑


徒歩組の我々はライトラポイントに向かいながら道中にいる虫を探すことにした。当たり前だが日本の植生とは全く違うのでどこに何がいるのか全くわからない。変な木があればビーティングしたり、水溜りがあればガサってみたりといった感じでやっていたため、必然的に歩くのが遅くなってしまった笑


登山する際にも数人の現地採集人が同行してくれた。登山の道中、彼らのルッキング力にはただただ驚かされてばかりだった。10mの長竿をめいいっぱい伸ばして届くか届かないかの高所にいる虫を目視ですぐに見つけてしまい、葉の裏にいる虫すらもいとも簡単に捕まえてしまうのである。現地採集人、恐るべし!!

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現地採集人の長竿

山に入って1時間弱、山の中腹あたりになるとコーヒー畑が急になくなり、原生林が広がり始めていた。虫の種数も一気に多くなり、我々はただひたすらに興奮していた笑

生えている木をひたすらルッキングしていると、山道沿いに生えていた一本の木に何やら大きい甲虫が集まっていた。近寄ってみるとヒメカブトだった!!!

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ヒメカブト
𝑿𝒚𝒍𝒐𝒕𝒓𝒖𝒑𝒆𝒔 𝒈𝒊𝒅𝒆𝒐𝒏 𝒈𝒊𝒅𝒆𝒐𝒏 Linneaus, 1767
マメ科の樹の樹液にきていた。日本のヤマトカブトムシと極めて似た生態をもち、仕草もとても可愛いらしかった。山中から道路沿いの街路樹まで様々な場所でみかけることができた。東南アジア広域に分布し、現在15の亜種が知られている。
 

ヒメカブトは現在植物防疫法によって規制されているため、日本で生体をみることはできない。この後もヒメカブトはいろいろな場所で採集することができたが、生態や動き方などは日本のカブトムシとほとんど同じという印象を受けた。

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原生林の林縁部?によく生えている木
揺らすとヒメカブトがたくさん落ちてきた

原生林内を進んでいくと道中では見なかったような大木が現れてきた。樹種が全くわからなかったが、モミ?のような木の樹液にアクミナートゥスネブトクワガタ𝐴𝑒𝑔𝑢𝑠 𝑎𝑐𝑢𝑚𝑖𝑛𝑎𝑡𝑢𝑠 Fabricius, 1801がたくさん集まっていた。

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モミ?の木がたくさん生えていた

そんなこんなで楽しみながら登山していると気づけばライトラのポイントに着いていた。
時刻は昼過ぎでライトラまでかなり時間があったので、更に標高を上げて採集することにした。

同行者は雑甲狙いで材割りを、自分はマルバネを採集したかったので、倒木がたくさんある場所に案内してもらった。


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巨大な倒木
ここではゴミダマを始め多くの雑甲を採集することができた

上の写真の倒木の幹と樹皮の間に多くの雑甲がいたが、クワガタはなかなか見つからなかった。渋々ピッケルで材の中を割るのを試みた。が、これがめちゃくちゃに硬く、なかなか割ることができなかった。粘って材を割っているとクワガタが出てきた!!

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𝐺𝑛𝑎𝑝ℎ𝑎𝑙𝑜𝑟𝑦𝑥 𝑜𝑝𝑎𝑐𝑢𝑠 Burmeister,1847
別名ヨロイサビクワガタ。日本に生息しているヤマトサビクワガタは𝐷𝑜𝑟𝑐𝑢𝑠属に分類されるが本種は𝐺𝑛𝑎𝑝ℎ𝑎𝑙𝑜𝑟𝑦𝑥属に分類されるため系統的に近いわけでは決してない。日本のクワガタでは見られない体表の質感が非常に良い。

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蛹もたくさん出てきた
春が蛹化シーズンなのか??

同じ材から意外なクワガタも見つかった。

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サメハダチビクワガタ
𝐶𝑎𝑟𝑑𝑎𝑛𝑢𝑠 sp.
成虫は1ペアしか見つからなかったものの、幼虫は多くの数を見ることができた。サイズは日本にいるチビクワガタ属(𝐹𝑖𝑔𝑢𝑙𝑢𝑠属)とさほど変わらなかったが本種の方がよりスリムな印象。上翅の筋の感じが素晴らしい。

他の場所でも材割りをしてみた。日本のマルバネクワガタ同様、ジャワ島に生息するラティコリスマルバネクワガタも赤枯れの材で見つかるらしい。ご存知かもしれないが、同じ𝑁𝑒𝑜𝑙𝑢𝑐𝑎𝑛𝑢𝑠属に分類されているとはいえ日本に生息しているサンダースマルバネクワガタ種群とチャイロマルバネクワガタとは系統的には離れているので、生態は少し異なるようだ。

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赤枯れの材割り

ひたすら材を割っても上の材の中からマルバネを見つけることはできなかったが、倒木が接している地面を掘っていくと繭玉がたくさん出てきた。ジャワ島にいるクワガタで繭玉を作るクワガタはマルバネクワガタ属(𝑁𝑒𝑜𝑙𝑢𝑐𝑎𝑛𝑢𝑠属)とツヤクワガタ属(𝑂𝑑𝑜𝑛𝑡𝑜𝑙𝑎𝑏𝑖𝑠 属)だけである。これは...と思いながら繭玉を割っていくものの、30近く出てきた繭玉の中は全て菌に侵されていた。。
よく知り合いのブリーダーの方からマルバネは成虫になる過程で落ちることが多いとよく聞いていたがまさかここまでとは思わなかった。。この材は諦めて別の材を探すことにした。


別の材でもやはり材の中ではマルバネは見つからなかった。今度こそ、と思いながら材の下を掘っていくと幼虫がわんさか出てきた!!

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ラティコリスマルバネクワガタの幼虫
 

成虫いないかなあ、、と思いながら土をひたすら掘ったが、結局成虫は出てこなかった。
現地採集人曰く、ラティコリスマルバネクワガタの発生時期は5月で成虫はこの時期だとまだ厳しいらしい。
やはりまだ早いのかと思いながら土を埋め戻していると、水昆屋のたごめ氏が声をかけてきた。「これなに」と指をさしていた方向にはなんと成虫がいたのだった!!!!!

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ラティコリスマルバネクワガタ
𝑵𝒆𝒐𝒍𝒖𝒄𝒂𝒏𝒖𝒔 𝒍𝒂𝒕𝒊𝒄𝒐𝒍𝒍𝒊𝒔 (Thunberg, 1806)
ジャワ島固有のマルバネクワガタ。ミャンマーやタイなどに分布するブレビスマルバネクワガタやマレー半島からボルネオ島にかけて生息しているキングラトゥスマルバネクワガタに近縁で、単系統群をなすと考えられている。採集方法が確立する以前までは幻のクワガタと呼ばれていた。体格に対して頭部が肥大し、大顎が太短いのが特徴である。跗節や脛節が短いため歩行傾向が強いと考えられている。

最終的に成虫は1ペア捕まえることができた(まさか人生初のマルバネクワガタが外国産になるとは...笑)。

夢中になること数時間、、、日も暮れ始めたのでライトラポイントに戻ることにした。
すでに白幕とライトの準備は整っていたため、近くの林で日没まで高所スイープすることにした。

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日没高所スイープ
夕焼けが無駄に綺麗でエモい

高所スイープでナナフシをいくつかとったあと、ライトトラップを点灯させた。
果たして山の神は飛んでくるか。。

2019 ジャワ島(6)はこちら
2019 ジャワ島(4)はこちら

2019 ジャワ島(4)


4日目(の午後)

4日目の午前中の記事はこちら

午前中はジャワ特産のクワガタが採れて非常に満足だった。
軽くベースキャンプで昼食をとったあと、午後はコーカサスオオカブトの多産地 ・某山に向かうため、一度現地採集人の家に戻る事になった。
ジープで下山途中、自分たちとは別の現地採集人グループと出会った。話を聞くとそのグループはどうもギラファノコギリクワガタを樹液採集していたらしく、その中の一人は100mmはゆうに超える巨大なオスを捕まえていた。

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ギラファノコギリクワガタ亜種𝑏𝑜𝑟𝑜𝑏𝑢𝑑𝑢𝑟
𝑃𝑟𝑜𝑠𝑜𝑝𝑜𝑐𝑜𝑖𝑙𝑢𝑠 𝑔𝑖𝑟𝑎𝑓𝑓𝑎 𝑏𝑜𝑟𝑜𝑏𝑢𝑑𝑢𝑟
Mizunuma et Nagai, 1991
現地採集人採集個体。大顎の太さがえげつない個体だった。

「自己採集品が一番」と思っていたが、この個体を見せられてしまうと少し悔しかった笑

現地採集人の家に向かう道中に良さげな田んぼがあれば、車を停めてもらってひたすらにガサった。田んぼによっては農薬を多く使っているところもあり、なかなか良い田んぼに出会うことができなかった。

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ジャワ島の水田
一見かなり良さげな田んぼに見えるが、農薬のせいか虫は全くいなかった

ガイドによると、現地採集人の家から某山までは車で約8時間かかるらしい。時刻は夕方だったので、出発は深夜にしてそれまでは近くの水田で夜間採集することにした。

昼に見た水田とは違い、農薬を撒いていないためか夜間みた水田には多くのカエルの幼生がいた。これは期待できる...!!と思いながらしばらく掬っていると巨大な水生半翅らしきものが網に入った!!
網の中を覗いてみると、なんとその正体は巨大なタイコウチだった!!!

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インドシナオオタイコウチ
𝐿𝑎𝑐𝑐𝑜𝑡𝑟𝑒𝑝ℎ𝑒𝑠 sp.
日本のタイコウチとは桁違いの大きさだった。大柄な体型だけでなく赤い腹部も大きな特徴の一つ。幼虫も採集することができたが、4令幼虫の時点で日本タイコウチのメスの成虫とほぼ同じくらいの大きさがあった。非常に格好いい。

水生昆虫は他にもオキナワスジゲンゴロウの仲間やシマゲンゴロウの仲間も採集することができた。現地採集人に「この近辺でもギラファを捕まえることができるぞ」と言われたので自分は水昆は早々に切り上げて近くの林で虫を探すことにした。
しかし、林ではさまざまな生き物を見ることができたが、クワガタがいそうな木はなかなか見当たらなかった。

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毒ヘビ?
サイズは日本のヒバカリと同じくらいで、現地採集人によると猛毒をもつらしい。脱皮前なのか眼が白くくすんでいる。


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ヒキガエルの仲間
Bufonidae gen. sp.
田んぼの周りにたくさん生息していた。瞼が大きくてゴツい顔をしていた。

藪漕ぎしながらしばらく探していると、目線の高さの枝先にペットボトルが引っかかっていた。

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民家の近くの林とはいえゴミなど殆どない場所だったため、不思議に思いながら近くに寄ってみてみると中にはなんとギラファノコギリクワガタのオスが入っていた!!!
現地採集人曰く、giraffa trapと言うものらしい。

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giraffa trap
ギラファノコギリクワガタを採集するためのトラップ。驚きなのはペットボトルの中に入っている個体はトラップに引っかかったものではなく、他の大型のオスを集めるために現地採集人が入れた個体だということ。
このタイプのトラップでは中にメスを入れてメスの性フェロモンでオスを誘引するのが一般的だが、ギラファに関してはどうも違うらしい。ギラファは縄張り意識がとても強く、自分のテリトリーに別のオスがいるとそのオスのいる方に集まるらしく(??)、このトラップはその習性を利用したものとのこと。
マンディブラリスフタマタクワガタも同様なトラップで採集することができるらしい。

結局林では某山へ向かう時間になるまでクワガタを見つけることができなかった。

田んぼから現地採集人の家に戻る道中、両脇にある崖状に土が露出した部分でブラックライトで照らしていると、青白く光るものが見えた!!サソリである!!!!!

採ろうとして光を照らすとすぐに巣穴に戻ってしまうのでなかなか捕まえられず、格闘すること数十分、、現地採集人がなにやらヤシの葉を切り出した。どうやらヤシの葉でサソリ専用のかき出し棒が作れるらしい(なぜか他の葉や枝ではうまくいかないらしい)。

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ヤシの葉脈をうまく使うとサソリ専用のかき出し棒ができるらしい

すると今まで苦労していたのが嘘のように大量にサソリを捕まえることができた。

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ヤシの葉でサソリを“釣る”現地採集人

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チャグロサソリ属の一種
𝐻𝑒𝑡𝑒𝑟𝑜𝑚𝑒𝑡𝑟𝑢𝑠 sp.
個体数自体はかなりいた。サイズは一般的に発売されているダイオウサソリと同じくらい。日本で販売されている所謂“チャグロサソリ(アジアンフォレストスコーピオン)”は𝐻𝑒𝑡𝑒𝑟𝑜𝑚𝑒𝑡𝑟𝑢𝑠 属のいくつかの種がまとめて呼ばれているようだ。

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ブラックライトで照らすと青白く光る

某山へ出発する前に、現地採集人の家で夕飯をいただいた。いただいたのは勿論、ナシ・ゴレン!!!

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用意していただいたナシ・ゴレンと鶏肉の塩胡椒炒め
美味しすぎて感動した。ナシ・ゴレンと一緒にあるのは巨大な胡瓜(味は日本のものと同じ)。


食事をとりながら昨晩のライトラの成果や大きなギラファが採れなかったことを現地採集人(一緒に行かなかった方)に報告すると
「俺の部屋見るか?」
と言われた。
意味がよくわからなかったがついていくとそこには夥しい数のギラファがいた!!!

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現地採集人の家の中にある生体管理部屋

インドネシアとは言えクワガタ採集で家計を支えるためにはこれくらいは捕まえないときついらしい(流石にこの時見せてもらったのはかなり採れた方らしい)。段ごとにサイズが違うらしく、左側のラックでは上段が95up〜、中段が90up〜、下段が80〜90だった。エサ兼止まり木としてサトウキビのようなものを与えていた。

夜も遅くなってきたので最終日にまたじっくりみさせてもらうことにして、某山に向けて出発した。 

2019 ジャワ島(5)はこちら。 
2019 ジャワ島(3)はこちら。 

2019 ジャワ島(3)


4日目

野鳥のさえずりとともに起床した。
 
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早朝のライトトラップの様子
レピはまだたくさん白布にくっついていた

起床後一応ライトラの周りを確認したが甲虫はほとんどいなかった。

現地採集人が町で買ってきた朝食を食べてる時に現地採集人の一人に次のようなことを聞かれた。

(現地採集人)「昨晩なぜライトラを点灯させていたのに森の方に行ってたんだ?トイレでもしてたのか?」
(自分)「えっ...虫集まるのに時間かかるからその間森で虫探していました」
(現地採集人)「アホかお前たちは笑 ここは黒豹がたくさんいるんだぞ」


(自分)(先に言えやああ(心の叫び)) 

ジャワ島にはヒョウが生息していることは下調べで把握済みだったがまさかここがまさにその生息地だったとは....
日本とはまた違った緊張感を味わうことができた(以後気をつけて採集しました笑)。

ジャングルなので当然シャワーなどがあるわけないので、水を浴びに近くの沢に向かった。すると、すでに先に沢へ向かった水昆屋のたごめ氏の雄叫びが聞こえた。
なにやらヤバい水生昆虫を見つけたらしく、急いでたごめ氏の元へ向かった。

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発狂するたごめ氏と現地採集人

たごめ氏が発狂していた場所は沢の淀みだった。恐る恐るたごめ氏の指差す方向を見てみるとなんとミズカマキリがいたのである!!!
ご存知の方も多いと思うが、本来ミズカマキリは休耕田やため池といった止水域を好む。しかしこのミズカマキリは流水域にいたのである!!さらにすごいことにこの場所で成虫と幼虫が同所的に採集することができたのである!!!つまり、この種はこの沢で繁殖している可能性が極めて高いと言える(そもそもこの沢はジャングルの奥地の谷のようなところにあるので周りにミズカマキリの発生源となりそうな止水域が殆どない)。

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ナガレミズカマキリ(仮称)
𝐶𝑒𝑟𝑐𝑜𝑡𝑚𝑒𝑡𝑢𝑠 sp.
日本に生息するミズカマキリが属する𝑅𝑎𝑛𝑎𝑡𝑟𝑎属と比べて𝐶𝑒𝑟𝑐𝑜𝑡𝑚𝑒𝑡𝑢𝑠属は呼吸管が極端に短く、体の横幅が広いのが特徴的。𝐶𝑒𝑟𝑐𝑜𝑡𝑚𝑒𝑡𝑢𝑠属のグループは日本には生息していないが台湾には𝐶𝑒𝑟𝑐𝑜𝑡𝑚𝑒𝑡𝑢𝑠 𝑏𝑟𝑒𝑣𝑖𝑝𝑒𝑠Montandon, 1909 が生息している。

本種は沢の淀みで見つかったわけだが、沢自体の水量は非常に多く、流れもそれなりに早かった(少なくとも普通のミズカマキリが生息できるような場所ではない)。

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水の透明度が高く、冷たかった

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ナガレミズカマキリを採集した沢の淀み
かなり浅い場所だったが、雨が降れば間違いなく増水するような場所だった。

他に何か変な水生昆虫がいないか沢沿いをガサっていくと休耕田?のような場所に出た。

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オランダガラシ?を栽培している水田?休耕田?

田んぼで採集するいつもの要領で畔沿いをひたすらガサっていくと....

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これは?!?!?!
もしやスジゲンゴロウ?!?!?!?!?!
国内絶滅種のスジゲンゴロウが採れてここでまた一同大興奮!!!!!
しかし、後日調べてみるとスジゲンゴロウではなくオキナワスジゲンゴロウの近縁種の可能性が高いことがわかった。何れにせよ採集できて嬉しい種だった。

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オキナワスジゲンゴロウの仲間
𝐻𝑦𝑑𝑎𝑡𝑖𝑐𝑢𝑠 sp.
側縁部に伸びる二本の黄色いラインの重なる位置がスジゲンゴロウ𝐻𝑦𝑑𝑎𝑡𝑖𝑐𝑢𝑠 𝑠𝑎𝑡𝑜𝑖にしては前寄りなので、スジゲンゴロウというよりオキナワスジゲンゴロウの近縁種ではないかと考えられる。南西諸島に生息するのオキナワスジゲンゴロウも水田や休耕田、浅い湿地などを好む傾向がある。

そんなこんなで早朝からテンション爆上がりのまま午前中は同じ森で𝐷𝑜𝑟𝑐𝑢𝑠狙いで採集することにした。

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ジャングルを突き進む現地採集人

道無き道を藪漕ぎすること約1時間...目の前に巨木が現れた。この巨木、近寄ってみると樹皮に多くのメクレがあった。現地採集人によると titanus trap というものらしく、狭いところが好きなヒラタクワガタ(ここではダイオウヒラタとタウルスヒラタ)の性質を利用した仕組みになっているらしい。仕組みといっても非常に単純なもので、ナタを下から上にむかっていれることで樹皮を残しつつ隙間ができれば完成らしい。また、ナタをいれた時にできる傷から樹液が滲み出るらしく、よりクワガタが集まりやすいのだとか。

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titanus trap が仕掛けられた巨木

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titanus trap

良さげな巨木が出るや否や現地採集人はすぐに木を登り始めた。これまた素足でスイスイと登っていくから驚きである。

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木を登る現地採集人

現地採集人は高所の titanus trap に集まってるクワガタをかき出し棒で取ってくれるらしく、しばらく木を登っているのを見守っていると何か黒い物体が上から落ちてきた。
「まだ現地採集人は登っている途中なのにいったい何が落ちてきたんだ..」
じっくり林床を探していると、落ち葉の上に黒い物体が鎮座していた。なんと黒い物体の正体はリツセマオオクワガタだった!!!!

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リツセマオオクワガタ
𝐷𝑜𝑟𝑐𝑢𝑠 𝑟𝑖𝑡𝑠𝑒𝑚𝑎𝑒 𝑟𝑖𝑡𝑠𝑒𝑚𝑎𝑒 Oberthür et Houlbert, 1914
以前はパリーオオクワガタ𝐷. 𝑝𝑎𝑟𝑟𝑦𝑖と呼称されていたが1998からはリツセマオオクワガタと呼称されるようになった。オオクワガタ亜属に分類され、現在7つの亜種が知られている。ジャワ島には東部に基亜種が、西部にジャワ島西部亜種𝐷. 𝑟. 𝑘𝑎𝑧𝑢ℎ𝑖𝑠𝑎𝑖 Tsukawaki, 1998が生息している。西部亜種は近縁種であるクルビデンスオオクワガタ𝐷. 𝑐𝑢𝑟𝑣𝑖𝑑𝑒𝑛𝑠 (Hope, 1840)に最も類似しており、個体数はとても少ない。

リツセマオオクワガタの登場によりここでまたメンバーのテンションが一気に爆上がりした笑
自分は野外で生きている状態のオオクワガタを今まで見たことがなかったので昨晩のギラファを採集した時と同じ、もしくはそれ以上に感動した。

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かき出し棒でクワガタを探す現地採集人

どうやらこの木は当たりだったらしく、多数のダイオウヒラタクワガタやタウルスヒラタクワガタを捕まえることができた。リツセマオオクワガタも少数ながらもメンバー全員分の個体数を確保することができた。
他の木も同じようなかんじで採集し続けると、今まで見たことないくらい大きなクワガタが目の前を落下した。急いで駆け寄って見てみると、なんとそれはダイオウヒラタクワガタの巨大なオスだった!!

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ダイオウヒラタクワガタ
𝐷𝑜𝑟𝑐𝑢𝑠 𝑏𝑢𝑐𝑒𝑝ℎ𝑎𝑙𝑢𝑠 (Perty, 1831)
82mm。ジャワ島固有種。一般的なヒラタクワガタとは異なり、低地ではなく原生林が残る標高1200m〜2000m付近の高地に生息している。東南アジアにはオオヒラタクワガタ𝐷. 𝑡𝑖𝑡𝑎𝑛𝑠 spp.が生息しているがジャワ島には生息していないため、本種がジャワ島におけるオオヒラタクワガタの代置種となっている。
東部と中部では大顎の形態に差異があるとされており、また、本種と台湾固有のミヤマヒラタクワガタ𝐷. 𝑘𝑦𝑎𝑛𝑟𝑎𝑢𝑒𝑛𝑠𝑖𝑠はスジブトヒラタクワガタ𝐷. 𝑚𝑒𝑡𝑎𝑐𝑜𝑠𝑡𝑎𝑡𝑢𝑠 Kikuta, 1985の近縁種とされている。

大顎の湾曲がオオヒラタクワガタとはまた違った味を出しており、とても良い虫だった。

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この巨木では多くのタウルスヒラタクワガタが採れた

3時間ほど採集し、ベースキャンプに戻る道中で面白いクモがいた。

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トゲグモの仲間
𝐺𝑎𝑠𝑡𝑒𝑟𝑎𝑐𝑎𝑛𝑡ℎ𝑎 sp.
日本にも𝐺𝑎𝑠𝑡𝑒𝑟𝑎𝑐𝑎𝑛𝑡ℎ𝑎属の仲間は生息しているが、全体的に地味な色をしており、角が短い。亜熱帯地域の𝐺𝑎𝑠𝑡𝑒𝑟𝑎𝑐𝑎𝑛𝑡ℎ𝑎属はこの個体のように角が大きく発達するものや派手な色をしているものが多い。長い角を持っている種では角の長さゆえに網が垂れ下がってしまうものもいるらしい。

図鑑でしか見たことがないようなクモがまさか実物で見つけることができるとは......
ジャワ島の“本気”を見た4日目の午前中だった(まだ午前中)。

2019 ジャワ島(4)はこちら
2019 ジャワ島(2)はこちら

2019 ジャワ島(2)

 
3日目

「流石に今日こそは東ジャワに移動できるよな...」と一抹の不安を抱えつつ、二日目同様朝早くに空港へ向かった。
グランドスタッフに確認してみたら、どうやら今日は本当にフライトがあるらしく安心した笑

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乗った飛行機
ガルーダ・インドネシア航空は日本でいうJALぐらい大手な航空会社らしい

ジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港からジャワ島東部のバニュワンギまでのフライトは約1時間20分(横の席に座った方が巨漢で鼻息が荒く、これがなかなか地獄だった笑)と意外と長いフライトだったが、朝も早かったためかすぐに寝てしまった。

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ジャワ島中部の風景
屋根が茶色のレンガでできた平屋が多い印象

日本からジャワ島に向かった時と同様、この時も目が覚めた頃には機体は着陸態勢に入っていた。機体のウイングが窓から見た感じだとかなり錆びついているように見えて少し不安だった笑。

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バニュワンギ空港
屋根に芝が生えているというとてもお洒落な空港だった 

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空港にて
この空港まではWi-Fiが使えたが、ここから4日間ほどはWi-Fiがなくスマホが一切使えなくなった。
 

空港では現地採集人が出迎えてくれており、車で彼らの家に向かうことになった(ちなみにこの現地採集人たちは、野外採集した昆虫を日本に輸入する業者に卸売りをしていた)。

バニュワンギは首都のジャカルタから離れたとはいえ交通量は多く、すぐには到着しなさそうだったので途中で昼食をとることにした。

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ナシゴレン
店や地域によって辛さや具材が変わっていて、とにかく美味しい!!

昼食をたらふく食べたところで再び現地採集人の家へ向かった。現地採集にの家に着いたのは15時を過ぎていた。この日は夜にギラファノコギリクワガタの産地でライトトラップする予定だったので、現地民とカタコトな英語で虫の話をして少し盛り上がったあとすぐにバックパックから荷物を解体して採集の準備をした。

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現地採集人の家
なんでもクワガタ採集のみで家を建てたらしい

ライトトラップのポイントまではジープに乗せてもらって移動することになった(なんでも採集ポイントは途中舗装されてない道を通らないといけないらしい)。
このジープも二日目のバンと同じくなかなかなものだった。。笑
逆走などをしたわけではないが、このジープ、とにかくボロい笑
採集ポイントに行くまでなんと3回もギアが外れたのである。道端でクラッチを使い、噛み直す作業を繰り返しながら採集場所に向かったわけだが、人手が足りない時は近くの住民(勿論誰も知り合いではない)と一緒に車を押してクラッチを入れ直していた笑(山道で鳴らなくて本当に良かった)

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乗ったジープ
ドアは運転席と助手席しかないので助手席から中に入った

採集ポイントに着いた頃は辺りは真っ暗だった。ここでさらにプチハプニングが発生。採集場所までは我々を乗せたジープと採集道具,現地採集人数名を乗せたジープ二台で向かったわけだが、現地採集人を乗せた車が来ないのである!!!どうやら道に迷っていたらしく、自分達が着いてから約40分後に着いた。

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採集地の入り口(写真は4日目に撮影)

夜が更け始めていたので、メーバーが揃い次第すぐに山奥へ入っていった。山道を40分ほど歩いたところでライトトラップのポイントに着いた。
ポイントに着くやいなや現地採集人が手早く木を切り始め、あっという間にライトトラップが立ち上がった(本当に早かった)。

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ライトトラップの様子

また、ここでは現地採集人の手際の良さだけでなく大胆さも垣間見ることができた笑 どういうことかというと、ライトトラップは反対側の山を照らすような位置に張られていたわけだが、ライトラの近くに大きな木の枝が邪魔していた。それを現地採集人に指摘すると、なんと素足でその木に登り、チェーンソーで枝を切ってしまったのである!! 
このおかげで我々のライトラを邪魔するものは一切なくなった。

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スイスイと木を登る現地採集人
この人は現地採集人の中でもトップクラスの木登り名人らしい

どうやらこの日はコンディションがイマイチらしく、虫の集まりはショボかった。1時間経っても暫く虫の集まりに変化はなかったのでここで夜食を取ることにした。
夜食後ライトラ付近を再び徘徊すると、布の後ろに何か黒い影見えた。恐る恐る近づいてみると...

「おおおおおおおおお」

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ギラファノコギリクワガタ亜種𝑏𝑜𝑟𝑜𝑏𝑢𝑑𝑢𝑟
𝑃𝑟𝑜𝑠𝑜𝑝𝑜𝑐𝑜𝑖𝑙𝑢𝑠 𝑔𝑖𝑟𝑎𝑓𝑓𝑎 𝑏𝑜𝑟𝑜𝑏𝑢𝑑𝑢𝑟 Mizunuma et Nagai, 1991
マンディブラリスフタマタクワガタと並び世界最大のクワガタムシにして今回の遠征の最大の目標種。種小名の𝑔𝑖𝑟𝑎𝑓𝑓𝑎はキリンを意味する。ギラファノコギリクワガタには多くの亜種が知られており、亜種間では大顎の形態に差が見られる。今回採集した個体は基亜種ではなくジャワ島,バリ島,スマトラ島南部亜種に分類され、大顎が太いのが大きな特徴である。

これにはとても感動した。クワガタに魅了されてはや15年、、、小学生の時ムシキングで初めてゲットした強さ200のカードがこのクワガタだった。自分のクワガタ好きがより一層強くなるきっかけとなった存在にまさか本当に野外で出会えるとは。。。この感動は死ぬまで忘れることができないだろう。

それから30分後。

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ギラファノコギリクワガタ亜種𝑏𝑜𝑟𝑜𝑏𝑢𝑑𝑢𝑟
𝑃𝑟𝑜𝑠𝑜𝑝𝑜𝑐𝑜𝑖𝑙𝑢𝑠 𝑔𝑖𝑟𝑎𝑓𝑓𝑎 𝑏𝑜𝑟𝑜𝑏𝑢𝑑𝑢𝑟 Mizunuma et Nagai, 1991
最初に捕まえた個体よりもやや小型だった。

またしてもギラファが飛来した。
この後もポツポツと飛来し、同行者も採集することができた。
クワガタ以外にはこんな虫が飛来してきた。

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シャチホコガ科の仲間
Notodontidae gen. sp.

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フトメイガ亜科の仲間?
Epipaschiinae gen. sp. ? 

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フクラスズメの仲間
𝐴𝑟𝑐𝑡𝑒 sp.

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ホシミスジエダシャクの仲間
𝑅𝑎𝑐𝑜𝑡𝑖𝑠 sp.

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スジモンヒトリの仲間
𝑆𝑝𝑖𝑙𝑎𝑟𝑐𝑡𝑖𝑎 sp.

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アシナガバエ科の仲間
Dolichopodidae gen. sp.

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チズモンアオシャクの仲間
𝐴𝑔𝑎𝑡ℎ𝑖𝑎 sp.

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ブドウスズメの仲間?
𝐴𝑐𝑜𝑠𝑚𝑒𝑟𝑦𝑥 sp. ?

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シャチホコガ科の仲間
Notodontidae gen. sp.

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ツマジロエダシャクの仲間
𝐾𝑟𝑎𝑛𝑎𝑛𝑑𝑎 sp.

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クロスジノメイガの仲間
𝑇𝑦𝑠𝑝𝑎𝑛𝑜𝑑𝑒𝑠 sp.

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スジベニコケガの仲間
𝐵𝑎𝑟𝑠𝑖𝑛𝑒 sp.

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ゴマケンモンの仲間
𝑀𝑜𝑚𝑎 sp.

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ヤママユの仲間
𝐴𝑛𝑡ℎ𝑒𝑟𝑎𝑒𝑎 sp.

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ホソバスズメの仲間
𝐴𝑚𝑏𝑢𝑙𝑦𝑥 sp.

しかし22時過ぎくらいからは全く飛来しなくなってしまった。結局ライトラを見ては周辺の森で虫を探す、というのを27時くらいまでやったがこれ以降クワガタが採れることはなかった。
そして自分はライトトラップの横で寝落ちしてしまった。 

2019 ジャワ島(3)はこちら
2019 ジャワ島(1)はこちら。 

2019 ジャワ島(1)


春の沖縄遠征では2019 沖縄島#1でも述べたが大学のサークルの春合宿で参加した。すでに観た方もいると思うが春の沖縄はクワガタ採集は惨敗だった。

南といえどまだ3月。クワガタには流石に早すぎたようだ(当たり前)。
とうことでこの春休みはさらに南下することにした。

行き先はインドネシアはジャワ島!!!
目標種はそう、ムシキング世代なら誰でも知っているギラファノコギリクワガタとコーカサスオオカブトである!!

 前置きはここまでにして早速本編に入ろう。


1日目

今回は有志5人でジャワ島へ向かった。(以下ではメンバーをオキシドール氏、たごめ氏、T氏、K氏と呼称する)
採集目的での海外遠征は初めてで何かと不安だったので今回は飛行機を格安航空ではなくJALを利用した。

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搭乗した飛行機
客は自分たち以外全員インドネシア人だった

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機内食
意外と量があって驚いた

さすがJALと言うべきか機内食はかなり充実しており、座席モニターで観れる映画もいろいろなものがあった。(The Greatest Showmanをここで初めて観て心底感動した(どうでも良い))ちなみに往路で乗った機体は最新機種だったらしく、窓のブラインドはボタン式で光の透過率(もしくは屈折率?)を変えて窓の明るさを調節することができ、これにとても驚いた。
そんなこんなで気付けば機体は着陸態勢に入っており、ジャカルタのスカルノハッタ国際空港に着いた時は現地時間で25時半を過ぎていた。

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ジャカルタの夜景
深夜なのにも関わらず東京並みに街が明るかった

入国審査を受け、今回の遠征の案内をしてくれるガイドの方と合流し、この日はビジネスホテルに宿泊した。


2日目

今回の遠征は主にジャワ島東部で採集する予定だったため、二日目も再び飛行機で移動することになっていた。午前中に発つ便だったので、深夜遅くチェックインしたのにも関わらず起床は7時となってしまい少しキツかった笑

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ナシ・ゴレン
ピリ辛が効いた炒飯のような味でとても美味しい

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ジャカルタ近郊の市街地
平屋造りが多く、交通量と気温が高いためか埃っぽかった

しかし、ここで今回の遠征で1個目のトラブルが発生した(今回の遠征では様々なトラブルが生じたのでここでのトラブルは“1個目のトラブル”としておく笑)。

今回利用した航空会社はガルーダインドネシア航空(一応五つ星(?)らしい)で、バックパックをカウンターで預けて保安検査場を通過するまではいつも通りだった。しかし、いくら搭乗口で待ってても自分たち以外の客がみつからないのである。

電光掲示板には乗る飛行機の便も表示されていたのになぜか客は自分たちしかいない。。なぜだろうと思いグランドスタッフの方と話していると衝撃的な事実が発覚した。

グランドスタッフが我々に行ったセリフ....それは..........

「お客様がお持ちの搭乗券に記載されている便は今日ではなく明日の便です」

「えっ..?」「日付が今日なんだが..」
「申し訳ないです。こちらの手違いで本来予定のない便の航空券を販売していました..」 
「??????????」

というわけで二日目はジャカルタに滞在することになってしまった...笑
流石に航空会社側に落ち度があるということでホテルを手配してくれた。

せっかくの時間が勿体無いということで早速ホテルに荷物を置きに行った。空港からホテルまではホテルのバンに乗って行くことになったがこのバンがなかなかなものだった.....笑

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色々とすごかったバン

ジャカルタは世界でもトップクラスの人口密集地である。ゆえに渋滞は日常茶飯事らしく、案の定ホテルに向かう際に我々も渋滞につかまってしまった。なかなか進まないなあと思っていたら急に進み始めたので何が起きたのかと思って外を見たらなんと逆走していた笑
おいおい....と思っていたがなぜか対向車が来ない。のちにわかったのだがどうやらホテルからチップをもらってる青年がわざわざ我々のために対向車を止めていたらしい笑(すごいぞ!四つ星ホテル!(違う))

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航空会社が用意してくれたホテル
なんと四つ星!!

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部屋の様子
無駄に広く、シャワールームはガラス張りだった
 
そんなこんなでホテルに着くや否や早速フィールドに向かうことになった。

と言っても当初予定のないスケジュールになってしまったので行き先をどこにするかとても悩んだ。ジャカルタ近郊はインドネシアの首都なだけあって開発がかなり進んでおり、森や林は近くには見当たらなかった。そこで我々はGoogle Mapの航空写真で見つけた近くの水田にタクシーで向かうことにした。

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水田につづく農道の轍
水温は40℃近くあったがオタマジャクシや水生昆虫がいた

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シマゲンゴロウ属の一種?
𝐻𝑦𝑑𝑎𝑡𝑖𝑐𝑢𝑠 sp. ?
上の写真の轍にいた。水温はかなり高かったが元気よく泳いでいた。上翅の色を黒くしたウスイロシマゲンゴロウのような色合いをしており、サイズ感もほぼウスイロシマゲンゴロウと同サイズだった。

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ジャワコオイムシ(仮称)
𝐷𝑖𝑝𝑙𝑜𝑛𝑦𝑐ℎ𝑢𝑠 sp
上の写真の轍にかなりの密度で生息していた。日本にいるコオイムシ𝐴𝑝𝑝𝑎𝑠𝑢𝑠という別のグループに属する。本種が属するグループは東南アジアに分布し、丸くて小さい体型をしている。三角の形をしている複眼が特徴的である。

田んぼに着くやいなやメンバー全員はしゃいで虫を探し始めた。言い忘れていたが今回のメンバーの専門はそれぞれオキシドール氏:甲虫全般、たごめ氏:水生昆虫、T氏:クワガタ,カマキリ、K氏:生き物全般である。
水昆好きのたごめ氏は特に興奮していた。

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ジャカルタの水田
この地域の稲はまだ小さかったため許可を得て休耕田でガサった 

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ジャワコオイムシ(仮称)
𝐷𝑖𝑝𝑙𝑜𝑛𝑦𝑐ℎ𝑢𝑠 sp
子を背負っている個体も見かけることができた。

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スリースポットグラミー
𝑇𝑟𝑖𝑐ℎ𝑜𝑔𝑎𝑠𝑡𝑒𝑟 𝑡𝑟𝑖𝑐ℎ𝑜𝑝𝑡𝑒𝑟𝑢𝑠
水田の用水路にて。ひと掬いすれば必ず1匹はとれるくらいの個体数がいた。グラミーの仲間は上鰓器官を持ち、乾季の高水温と酸素不足に適応している。日本では他のグラミーと共に熱帯魚として輸入されることが多い。 

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グラミーはキノボリウオと一緒にかなりの個体数を見かけることができた

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ヒラオヤモリの仲間?
𝐻𝑒𝑚𝑖𝑑𝑎𝑐𝑡𝑦𝑙𝑢𝑠
sp. ? 
民家よりも樹皮下でよく見かけた。尾が扁平なのでヒラオヤモリの仲間だと思われる。

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サイカブトの仲間
𝑂𝑟𝑦𝑐𝑡𝑒𝑠 sp.
網に引っかかっていた。完品のオスだったがあまりにも複雑に絡まっていたのでとるのは断念した。

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イナゴ科の一種
𝐶𝑎𝑡𝑎𝑛𝑡𝑜𝑝𝑖𝑑𝑎𝑒 gen. sp.
今まで見たことないくらい巨大だった。体長は大型のショウリョウバッタに匹敵するほど。全身山吹色をしているが下翅は赤い。

実は3月のジャワ島は日差しの強さが半端ではなく、冬明けの我々の体にはかなりこたえていた。笑
そこで一時間ほど採集したら休憩がてらタクシーに戻り、休んでいる間に別のポイントへ向かうことにした。次に向かった場所は水田ではないが用水路がたくさんあるヨウサイの畑である。ここで栽培されているヨウサイは湿地性らしく、畑の側にたくさんの用水路が引かれていた。

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ヨウサイ𝐼𝑝𝑜𝑚𝑜𝑒𝑎 𝑎𝑞𝑢𝑎𝑡𝑖𝑐𝑎 Forsskal.の畑
日本ではあまり馴染みのない農作物だが東南アジアで多く栽培されている。日本には沖縄経由で九州に渡来した。

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実際の作業の風景
用水路の水を農作物にかけていた

東南アジアならどこでもそうなのかもしれないが、ジャワ島では野良犬がかなり多かった。狂犬病の心配もあったためあまり近づかないように気をつけていたが、このヨウサイ畑では一匹の飼い犬(?)がいた。
この犬がなかなかしつこく、部外者である我々を執拗に追いかけてきて少し怖かった笑

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イッヌ
部外者であるこちらは警戒してずっと追ってきた

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デルモゲニーの仲間
𝐷𝑒𝑟𝑚𝑜𝑔𝑒𝑛𝑦𝑠 sp.
淡水性のサヨリ科の魚で東南アジアに広く分布する。その風貌から小型のアリゲーターガーとも称されている。品種改良されたゴールデンデルモゲニーが熱帯魚として現在流通しており、単価が安くて飼育も容易なので初心者にオススメな入門種である。日本でいうメダカのような存在だった。

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マダラロリカリア
𝑃𝑡𝑒𝑟𝑦𝑔𝑜𝑝𝑙𝑖𝑐ℎ𝑡ℎ𝑦𝑠 𝑑𝑖𝑠𝑗𝑢𝑛𝑐𝑡𝑖𝑣𝑢𝑠 (Weber, 1991)
アマゾン川、マデイラ川原産のナマズ目の熱帯魚である。アメリカや日本、シンガポールなど世界各国に移入されており、定着している。
日本では外来生物法に基づいて要注意外来生物に指定されている。 


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夢中になるたごめ氏

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エサキタイコウチ
𝐿𝑎𝑐𝑐𝑜𝑡𝑟𝑒𝑝ℎ𝑒𝑠 𝑚𝑎𝑐𝑢𝑙𝑎𝑡𝑢𝑠 (Fabricius, 1775)
ヨウサイ畑の用水路にて。与那国島に分布しているエサキタイコウチは暗くて浅い湿地帯に生息しているが、この個体がいた用水路は物陰がなくて明るかった。また、ある程度の水深もあったことから日本のものとは少し生態が違うようだ。

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ミズカマキリの仲間
𝑅𝑎𝑛𝑎𝑡𝑟𝑎 sp.
田んぼやヨウサイ畑の水路などで見かけることができた。マダラアシミズカマキリとかなり似た姿形をしていたが脚に斑紋は見られなかった。ヒメミズカマキリよりもやや大きい程度の大きさで、浅い場所を好んで生息していた。とても可愛らしいミズカマキリだった。

メンバー全員夢中で採集していたらすでに19時近くになっていた。次の日は本来乗るはずだった飛行機に乗らなければいけないため、この日は早めに切り上げてホテルで晩飯をとった。

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ナシ・ゴレン(1)

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ナシ・ゴレン(2)
黒いのは胡椒のきいた青椒肉絲のようなものでとても美味しかった

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東南アジアでは有名(?)なビール

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中でもこの“BINTANG”というビールはとても美味しかった

夜間街灯巡りをしようとしたがスコールが降ってしまい断念。次の日に備えてこの日は早く寝ることにした。

2019 ジャワ島(2)はこちら
プロフィール

鍬吾郎

離島を愛する鍬形屋
大学四年間の目標は日本の採集可能なクワガタ全種を自己採集すること
夏はほぼ島にいます
自己採集品のブリードも少々
水生昆虫もやります

離島屋 | 日本産LucanidaeとDytiscidae
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